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  • ドローン衝突時の電池の安全性評価に関する検討
  • ドローン衝突時の電池の安全性評価に関する検討

    岡田賢(安全科学研究部門 爆発安全研究グループ)

    • 柴田強(安全科学研究部門 爆発安全研究グループ)
    • 齋藤喜康(省エネルギー研究部門)
    • 岩田拡也(インダストリアルCPS研究センター)

    【背景・経緯】
     ドローンやロボットの活用による省エネルギー化の実現が期待されており、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(DRESSプロジェクト)」において、物流、インフラ点検、災害対応等の分野で活用できるドローン及びロボットの開発を促進するとともに、社会実装するためのシステム構築及び飛行試験等が実施されました。3機種のドローンの衝突試験において、1機種でバッテリに発火が発生しました。バッテリに関するリスク低減に関する検討を行いました。ドローンが飛行中に衝突したり落下したりした時に、バッテリが衝撃によって変形することを想定し、荷重を受ける方向や荷重をかける突起物の形状等をパラメータとして、圧壊試験を実施しました。

     

    【成果】
     バッテリは、18Ah, 9.3Ahの2種類のドローン用バッテリを使用しました。圧壊子は3種類(突起、平板、釘刺し)のものを使用し、圧壊子および圧壊方向(2〜4方向)の組み合わせの9水準(A〜I)に分類しました。圧壊速度は1 mm/sとし、熱暴走、90%変形、荷重100kNに到達のいずれかが確認された時点で圧壊を停止しました。突起型圧壊子による圧壊試験(水準A~D)、平板型圧壊子による圧壊試験(水準E~G)、釘刺し型圧壊子による圧壊試験(水準H~I)の結果を図に示しました。なお、CとFは、図内のレンジ外であったため、プロットは表示されていない。(Gp.1)バッテリパックの長辺衝突、(Gp.2)バッテリパックの短辺衝突、(Gp.3)鋭利な突起物による衝突に大別できました。衝突試験でバッテリが発火した際の荷重の推定値が67.9kNであったことから、ほぼすべてのグループで発火の可能性があります。特に、Gp.3の鋭利な突起物によって損傷が発生すると発火に至る可能性が高いことがわかりました。

     

    図 発火が生じた試験における最大荷重と変位量の関係
    (A〜IやGp.1-3の詳細は本文に記載、矢印と点線は衝突試験の荷重値)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     発火が認められたドローンも、バッテリ周辺にリベット等の突起物が配置されている構造でした。衝突試験時にはこれらの突起物がバッテリを損傷した可能性があります。ドローンにおいて衝突や墜落が発生した時のバッテリの発火リスクを低減させるには、バッテリの周囲に極力硬質で鋭利な部材を配置しない等の配慮が重要です。これらバッテリの発火リスクを詳細に評価するためには、バッテリ周辺部材の配置状況の検討や電池の衝突実験の実施が必要となります。

     

    【謝辞】この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(JPNP17004)の結果得られたものです。関係各位に感謝いたします。

    2023年12月05日