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  • 将来需要変化を考慮した中長期的な資源枯渇ポテンシャル評価
  • 将来需要変化を考慮した中長期的な資源枯渇ポテンシャル評価

    横井崚佑(持続可能システム評価研究グループ)

    • 本下晶晴(持続可能システム評価研究グループ)

    【背景・経緯】
     鉱物資源は私達の生活に必要不可欠な資源ですが、その有限性から将来における資源量の逼迫および枯渇が懸念されています。そのため、製品やサービスの様々な環境影響を包括的に評価するライフサイクルアセスメント (LCA) においても、鉱物資源の使用による将来の資源利用可能性への影響は重要な問題として評価に含まれ、評価指標開発が進められてきました。しかし、従来の評価モデルでは将来における需要量や循環利用量の変化を考慮しない静的な評価となっているという問題がありました。さらに、短期的な資源量の逼迫と長期的な資源量の枯渇のどちらを懸念するかという時間的視点は評価者により異なり、そうした評価者の関心や視点に応じた評価指標選択を可能とするモデルも存在していませんでした。

     

    【成果】
     本研究では既存モデルを拡張し、将来の需要変化とリサイクルを考慮して任意の対象年に対して資源枯渇ポテンシャルの算定を可能とするモデルを構築し、生産量の多い主要な6金属 (Al, Cu, Fe, Pb, Ni, Zn) を対象に評価を行いました (鉄を基準物質として相対的に評価)。2010~2100年の範囲で対象年を変化させた場合の資源枯渇ポテンシャルの推移を、従来の評価モデルによる算定結果に対する相対値として図に示します。なお、評価は5つの社会経済シナリオ (SSP) を対象に行いました。
     短期的な視点で将来における資源量の逼迫を考えた場合、銅の資源枯渇ポテンシャルが特に従来のモデルと比べて大きく評価されましたが、より長期的な視点で考えた場合は亜鉛や鉛の資源枯渇ポテンシャルが従来のモデルと比べてより大きく評価されるという結果となりました。これは将来需要の変化やリサイクルによる天然資源採掘の代替の程度が異なることが理由であり、従来のモデルではこれらの資源の枯渇ポテンシャルを過小評価する可能性が示唆されました。
    本成果は下記論文で公開されています。

     

    Yokoi et al. (2022) Int. J. Life Cycle Assess. 27, 932-943.
    https://doi.org/10.1007/s11367-022-02077-2

     

    図 対象年の変化に応じた資源枯渇ポテンシャルの推移
    (従来モデルによる算定結果に対する比として表す)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     本成果は、資源の利用可能性を考える上で重要な要素である将来需要とリサイクルを考慮に入れて、中長期的な視点から資源量の逼迫を評価した研究となります。LCAの手法発展としての貢献に加えて、異なる視点に応じた資源評価を通した資源管理戦略への貢献も期待されます。今後の展開としては、対象資源種の拡張やカーボンニュートラルを含めた多様な将来シナリオのもとでの指標算定が必要と考えています。

     

    ※ 本研究の一部は、JSPS科研費20K20014の助成を受けたものです。

    2023年12月05日