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  • 高エネルギー物質の爆轟現象に関する書籍の執筆
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    久保田 士郎(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】
     爆轟波は、物質中の燃焼速度が、その物質の音速を超えて伝わる自立した燃焼波です。波頭では瞬間的に数千度、数十万気圧の高温高圧状態が達成され、そのエネルギーは広く応用されています。例えば、鉱山採掘やトンネル発破、ビル解体発破などに用いられる爆薬は、爆轟を呈する代表的な物質です。材料開発や宇宙開発などにも使用され魅力的な物質ですが、高速現象のため、安全で有効な応用には研究課題と可能性が残されており、自らも研究の柱としております。ところで、最近では爆轟研究の第一線で活躍された研究者が次々に引退されている状況もあり、凝縮相爆轟の研究テーマが減っています。そこで、これから爆轟研究に取組もうとする研究者などを支援するために凝縮相爆轟に関する本を執筆しましたので紹介します(1)。

     

    【成果】
     大学や企業で爆轟研究の第一線で活躍された研究者5名と共に、私はエディターとして爆轟現象に関する本を執筆しました。第2章では爆轟理論を分担しました。同理論は気相の爆轟から発展した歴史があり、凝縮相理論をベースとした説明がありませんでした。私は凝縮相の関係式を一貫して用い基礎式を展開しました。さらに、定常爆轟の経路を圧力と体積に内部エネルギーも加えて状態曲面を利用した3次元的表現を用いて説明しました。図に示す通り、初期状態(A)から衝撃を受けて未反応のままスパイク点(B)に到達し反応がスタートします。反応進行と共に膨張し(C)で反応が終了し爆轟生成ガスの状態曲面上でさらに膨張します。理論は従来のものですが、表現方法は新しい試みです。関連して火薬学会からの講演依頼に応じるなど、まずは爆轟研究の啓蒙・教育活動から取り組んでいます(2)。

     

     

    図 状態曲面を利用した定常爆轟の説明

     

    【成果の意義・今後の展開】
     執筆した本は教科書的要素から、これから凝縮相爆轟関連研究に取組もうとする研究者等の支援まで視野に入れたものです。今後も、この本を利用して爆轟研究に関する教育・啓蒙活動を展開します。残された課題や挑戦すべき課題を整理し、爆轟研究を活発化させます。そのために、高エネルギー物質の爆轟研究に関し新しい研究テーマを創生して、研究資金を獲得し研究活動を継続することが重要と考えています。

     

    (1)Shiro Kubota (ed) (2023) Detonation Phenomena of Condensed Explosives, Springer, Singapore

    (2)久保田士郎, 「我が国における爆轟・殉爆・非理想爆轟研究」,火薬学会2023年度秋季研究発表会付帯行事 爆発衝撃の諸現象に関するワークショップ

     

     

    2024年01月25日