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  • 2022年度火薬類保安技術実験(野外実験)
  • 2022年度火薬類保安技術実験(野外実験)

    松村知治(爆発安全研究グループ)

    • 久保田士郎(爆発安全研究グループ)
    • 杉山勇太(爆発安全研究グループ)
    • 丹波高裕(爆発安全研究グループ)
    • 佐分利禎(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 牧野良次(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 高橋良尭(爆発利用・産業保安研究グループ)

    【背景・経緯】
     経済産業省は、通商産業省時代の1961年から各地の陸上自衛隊演習場を借用して、火薬類の大規模な爆発実験(火薬類保安技術実験、以下、野外実験)を実施しています。野外実験で得られた成果は、法令の改正や保安行政上の指導のための資料として活用されています。産総研は、この実験に第1回目(国立研究所時代)から継続して参加・協力し、実験計画の立案、実験データの計測・評価と報告書の執筆、技術基準案の検討、に携わっています。
     火薬類の貯蔵施設である火薬庫は、十分な保安距離が確保された安全な場所に設置されますが、近年、火薬庫立地後の周辺環境の変化(住宅地等の拡大)に伴い、保安距離と貯蔵量の削減が求められる事態が起きています。

     

    【成果】
     2022年度は含水爆薬80 kg(実規模の1/7.9 スケール)を用いた爆発実験を4回、行いました。(内訳:火薬庫側(内面)が垂直で、内面の構造(用いる資材や傾斜角等)が異なる土堤の実験3回、基準爆風圧実験1回)
     具体的には、①セメント配合量200 kg/m3 の内面垂直ソイルセメント土堤、②土堤の上半分が内面傾斜角60 度の補強土、下半分は内面をコンクリート垂直擁壁で補強した土堤、そして、③土堤の上半分が内面傾斜角45 度の普通土、下半分は内面をコンクリート垂直擁壁で補強した土堤、を構築して、爆風圧や地盤振動等の爆発影響データを計測しました。
    その結果、①の土堤は、爆発による衝撃で粉々に粉砕され軽量飛散物となること、②と③の土堤は、いずれも、遠方まで飛散する重量飛散物が発生しないこと、加えて、①②③の土堤に共通して、爆風圧や地盤振動は従来土堤(内面傾斜角45 度)と同等なことがわかりました。

     

     

    図:高速度カメラ撮影画像の例
    ※数字は点火からの経過時間(ミリ秒)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     本実験で使用した3種類の土堤は、爆風圧や地盤振動に加えて、飛散物についても安全性が確認されました。この結果は、今後、火薬庫の保安距離や貯蔵量を適切に見直す際の重要な判断材料になると思われます。そして、将来的には、土堤に関する技術基準などの法令改正に、本実験の成果が活用されることを期待します。
     本実験の詳細を含む委託事業報告書1) は、経済産業省のホームページで公開中です。ご興味のある方は、どうぞご覧ください。

     

    ※本研究は、経済産業省、防衛省、公益社団法人全国火薬類保安協会、公益社団法人日本煙火協会、日本火薬工業会、その他関係機関・団体のご協力を得て実施しました。ここに付記し、感謝申し上げます。

    2024年03月18日