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  • あたらしい発想に基づく防爆ドローンの試作とパフォーマンス評価
  • あたらしい発想に基づく防爆ドローンの試作とパフォーマンス評価

    牧野良次(爆発利用・産業保安グループ)

    • 佐分利禎(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 岡田賢(爆発安全研究グループ)
    • 久保田士郎(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】
     化学プラントにおけるドローン活用に期待が集まっています。ドローンを使ってタンク等を高所から撮影した画像をAIで解析すれば保守点検を効率化することができます。従来高所の保守点検は足場を使った人による高所作業で行われていましたが、ドローンを使えば足場コストの削減になるだけでなく転落などの労働災害防止にもつながります。しかし市販のドローンは「非防爆電気機器」ですので、可燃性雰囲気が存在する可能性のある「危険区域」で使用することができません。防爆対応ドローンの実用化が解決策となりえますが、現状ではドローンの防爆性能に関する国際規格や国内指針が整備されていないことから、技術要件や性能評価方法の早急な確立が望まれています。

     

    【成果】
     技術的に可能でユーザーのニーズに合う防爆ドローンとするためには、ドローンの軽量化と落下時の防爆性能の維持を同時に達成することが重要です。軽量化はモーター等について非防爆部品(通常の電気機器)を使うことにより実現します。ただしエネルギー源であるバッテリーだけは防爆にしなければなりません。落下時の防爆性能の維持にはインターロック回路を利用します。万が一ドローンが落下し始めた際、落下を検知しインターロック回路によって通電を遮断することができれば通電遮断後の非防爆部品は単なる物体と見なせます。落下した際の衝撃で防爆バッテリーが防爆性能を失ってはなりませんし、地面との衝突による火花の発生も防がなくてはなりません。これらはカゴ等を用いた機体保護によって実現します。これらの措置を実装した「産総研方式防爆ドローン」を試作し、危険区域に落下した場合の発火リスクを低減できるかどうか検証するため試験を行いました。試験の結果、落下時の発火リスクを十分低減できる可能性を示すことができました。

    図 産総研方式防爆ドローン試作機

    バッテリーを円筒形の耐圧防爆容器に格納しています(カゴは装着していない状態です)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     防爆ドローンの社会実装は産業保安の高度化や労働災害リスクの低減に貢献すると期待されます。今後もさらなる軽量化・安全化を目指して防爆ドローンの技術開発を継続します。さらに、地面への落下衝撃を緩和する保護対策の有効性、落下衝撃に対する防爆バッテリーの堅牢性を試験する方法について検討します。これらの成果をもとに、防爆ドローンの技術要件や性能評価方法に関する国際標準の開発にも着手したいと考えています。

    2024年07月17日