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  • 国連試験(8(e))の修正提案が国連危険物輸送専門家小委員会(SCE TDG)で採択
  • 国連試験(8(e))の修正提案が国連危険物輸送専門家小委員会(SCE TDG)で採択

    岡田賢(爆発安全研究グループ)

    • 丹波高裕(爆発安全研究グループ)
    • 柴田強(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】
     含水爆薬中間体(ANE, Ammonium Nitrate Emulsion)を利用するバルクエマルションの鉱山発破やトンネル発破への導入が始まり、発破の安全性向上や省人化が期待されています。産総研らは、MBP(最小燃焼圧力)試験を日本でも導入できるよう試験の実施とJISへの導入検討を令和4年度から開始し、実験装置を試作し、MBPが正しく測定できることを実証1)しました。これら成果から、JIS K 4828-4(火薬類危険区分判定試験方法)の改訂を予定しています。一方、この検討の過程で、国連で定められている試験法を改正してJISに導入する方が良い事がわかりました。そこで、改正事項を国連にフィードバックし、試験方法を修正してもらうように提案2)しました。

     

    【成果】
     国際的な危険物輸送において、国連が出版するMTC(Manual of Test and Criteria)に沿った試験方法で判定が行われます。今回、国連8(e)試験の修正が必要と判断し、提案を行ないました。具体的な修正事項は、以下の4点となります。①試験体(鉄管)への試料導入手法について、シリンジを利用する等の具体的な表記の指定をしました。②加熱用のニクロム線がインチ法のみの対応であったので、直径0.50-0.51mmと幅を持たせ、メートル法とインチ法の両方への適応としました。③圧力容器内に温度計の設置を推奨する記述を追加しました。④断熱圧縮による温度上昇が安定した後に着火を実施するような記述を追加しました。提案は、2024年6月に開催された第64回国連危険物輸送専門家小委員会(SCE-TDG)および爆発物検討部会(Explosion Working Group)に提出され、議論の結果、修正提案が全面的に採択3)されました。

     

    図 国連の会議場(スイス・ジュネーブ)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     提案が採択されたことで、MTCにおける国連8(e)試験は、JISと国連試験が完全に整合し、さらに細かな修正を加えたことで、測定精度が向上することが期待されます。また、火薬類の標準化研究が日本においても活発に行われていることがアピールできました。今後、日本で飛躍的に使用が広がることが期待されるバルクエマルションの安全性評価についても積極的に貢献していきたいと考えています。火薬類の国際化対応研究についても引き続き進めていきます。

     

    1) 含水爆薬中間体(ANE)の最小燃焼圧力(MBP)試験の実施とJISへの導入、安全科学研究部門HP研究紹介、https://riss.aist.go.jp/research/20230323-2525/、2023年3月23日
    2) Amendments to UN 8(e) (Minimum Burning Pressure) Test (Japan), ST/SG/AC.10/C.3/2024/8.
    3) Report of the Sub-Committee of Experts on the Transport of Dangerous Goods on its sixty-fourth session, ST/SG/AC.10/C.3/128.

    2024年10月10日