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  • 再生プラスチック材料中元素濃度からその変動要因を考察する
  • 再生プラスチック材料中元素濃度からその変動要因を考察する

    小栗 朋子(排出暴露解析グループ)

    【背景・経緯】
     再生プラスチックの利用促進が世界的な関心事となる一方で、プラスチック製品のライフサイクル全体を通した安全性や品質に関する評価手法の開発は緒についたばかりです。再生プラスチックには製造者の意図しない添加剤や未知の物質が含まれている可能性があり、これらが製品の製造・使用・廃棄及びリサイクルなどを介して、人へ移行しうると考えられます。プラスチック製品用途に応じて、RoHS指令などの規制値が定められていることから、製品原料となりうる再生材料について元素含有状況を把握する必要があります。本研究では再生プラスチックペレットを対象として、可搬型蛍光X線装置による元素のスクリーニング分析を行い、元素濃度の変動要因の考察のために統計解析を行いました。

    【成果】
     RoHS指令の基準値が設定されているPb, Cd, As, Crの4元素のうち、Cdは38検体中1検体で最大許容濃度(100mg/kg)を超過しました。このペレット試料の原料は産業利用済みのパレットであり、プラスチックの着色剤としても使用される黄色顔料(カドミウムイエロー)の混入などが可能性として考えられました。次に元素間の濃度の関連性から変動要因を見出すことを目指し、Sr, Ti, Cu, Fe, Ni, Ca, Znの7元素を対象に因子分析を行ったところ、3つの因子に分けられました。得られた因子と関連性の高い元素の用途から、それぞれ顔料由来、製造設備の部材由来、光散乱剤や紫外線防止剤等の樹脂添加材由来と推察されました。簡易測定法によって再生プラスチックペレットに含まれる元素組成を把握することにより、再生プラスチックペレットの由来が推定できることが示唆されました。

     

    図1 プラスチックペレット試料の元素組成把握と因子分析

     

    【成果の意義・今後の展開】
     再生プラスチック材料の安全性には、再生プラスチックペレットに含まれる元素濃度や変動要因が大きく関わってきますが、まだほとんど調査がされていません。今回示したような可搬型蛍光X線分析による元素組成や変動要因の把握の手法は、再生プラスチックの利用促進に向けた、適切なリスク管理に有効であると考えています。今後、再生プラスチックの含有化学物質データを蓄積するとともに、安全性評価手法の開発を進めていく予定です。

     

    ※ この成果は、下記演題として発表した内容に基づきます。
    小栗朋子、篠原直秀、小倉勇、小島直也、梶原秀夫、小野恭子、蒲生昌志(2024)再生プラスチック材料中元素濃度とその変動要因の考察、2024年室内環境学会学術大会、P-43

     

    ※ この成果は、産業技術総合研究所・所内公募「課題解決融合チャレンジ研究:サーキュラーエコノミー評価・利用のための基盤システム研究開発」によって得られたものです。

    2024年12月24日