使用済み核燃料を活用したエネルギー技術に対する大衆の受容性
Yoon-Young Chun(社会とLCA研究グループ)
【背景・経緯】
化石燃料の供給が限られていることやカーボンニュートラルの目標のため、人類は現在のエネルギーシステムに対する最善の解決策を見つけようと努力しています。本研究は、革新エネルギー源として放射性廃棄物に焦点を当てています。使用済み核燃料である放射性廃棄物からエネルギーを収穫するというアイデアは、少なくとも原子力技術系/研究系の分野で議論されてきました。産総研でも2021年から若手融合チャレンジ研究において、放射性廃棄物を第二の都市鉱山として活用するダイヤモンド量子電池の開発を行っています。しかし、放射性廃棄物や関連課題に対する大衆の否定的な認識と低い受容度は、このようなアイデアを実現する上で障害になる可能性があります。
【成果】
本研究は使用済み核燃料からエネルギーを収穫する技術に対する大衆の受容度と受容に影響を与えうる因子を理解し分析することを目標とします。影響因子としては、過去の類似研究の分析を踏まえ、「エネルギー関連機関に対する信頼度」、「環境意識」、「原子力発電/放射能に関する科学的知識度」、「当該エネルギー技術に対する社会的・環境的利点とリスク」を選定しました。また、使用済み核燃料からエネルギーを収穫する技術に対する大衆の受容度モデルを開発し、選定した影響因子と当該技術の受容度との関係を分析しました。特に専門家に基づいたコミュニケーション戦略、すなわち関連した専門的知識の伝達を通じて社会構成員の科学的知識を増進させる方策が、該当技術の受容性を高めるのに効果があるかについて調査しました。これらの結果を国際学会EcoBalance 2022(The 15th Biennial International Conference on EcoBalance)およびAFORE 2024(The 13th Asia-Pacific Forum on Renewable Energy)で発表しました。
図 使用済み核燃料からエネルギーを収穫する技術に対する大衆の受容度モデル
該当エネルギー技術に対する社会的・環境的利点を大きく認識する人ほど、使用済み核燃料を活用したエネルギー収穫技術に対する受け入れ意向が高い。 逆に、社会的・環境的リスクを大きく認識するほど、受容の意向は減少する。 社会的・環境的利点とリスクの認識にそれぞれ影響を与える因子は、大衆のエネルギー関連機関に対する信頼度と原子力発電/放射能関連の科学的知識程度である。 環境意識は、大衆の社会的および環境的利点を認識する程度にのみ影響する。
【成果の意義・今後の展開】
日本全国の市民を調査対象に、使用済み核燃料を活用したエネルギー収穫技術の受容度と受容度に影響を与える要因を明らかにしました。 また、大衆の関連科学的知識の程度が増進されるほど、彼らの受容度も改善されることを確認しました。 この研究結果は、使用済み核燃料の処分および管理方法に関して、これを資源として活用してエネルギーを収穫しようとする場合に留意すべき事柄への洞察を提供するものです。
※ 本研究は産総研の若手融合チャレンジ研究「放射性廃棄物を第二の都市鉱山として活用するダイヤモンド量子電池の開発」の助成を受けたものです。
2025年01月31日