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  • グリーンサステナブル半導体の製造に向けたLCAの課題検討
  • グリーンサステナブル半導体の製造に向けたLCAの課題検討

    畑山博樹(持続可能システム評価研究グループ)

    【背景・経緯】
     グリーン社会の実現には、様々な製品やサービスにいてサプライチェーンを通した環境負荷の低減が必要です。デジタル社会を支える半導体についても、性能やコストだけでなくサステナビリティの視点を加味した製造技術の開発がもとめられています。このような背景から、産総研は2022年に半導体関連企業とともに「グリーンサステナブル半導体製造技術検討会」を立ち上げました。検討会では半導体製造プロセスの“グリーンさ”を評価できる指標の開発を目指しており、LCAの貢献が期待されています。一方で、半導体製造プロセスで使用される特殊な薬液やガスのインベントリデータが当部門で開発しているIDEAをはじめとした既存のデータベースに格納されていないため、LCAを実施する上での障害になると予想されています。

     

    【成果】
     シリコンウエハ上の酸化膜形成やエッチング、材料洗浄等に用いられる主要な薬液、ガスのインベントリデータの有無について、2つのデータベース(IDEA、ecoinvent)を対象に調査を行いました。その結果、薬液は比較的データが揃っているのに対し、ガスは他産業でも広く用いられるアンモニアや塩素ガスを除き十分に整備されていない状況が確認されました(下表)。特にCF4、WF6などフッ素化合物のデータ整備がもとめられる点が明らかになりました。また、両データベースのCO2排出原単位を比較すると、想定された製造技術やプロセス間のアロケーションの考え方の違いによる乖離が一部の薬液、ガスについて存在していました。
     これら薬液、ガスのインベントリデータは、化学工業で一般的に使用されるグレードを想定して整備されています。しかし半導体製造では純度の高いハイグレードのものが使用さるため、高純度化プロセスの影響を加味したCO2排出原単位の評価の必要性も明らかになりました。

     

    表 半導体製造向け薬液、ガスのインベントリデータ整備状況

     

    【成果の意義・今後の展開】
     半導体製造のグリーン化を進めるためにはLCAによる環境負荷のホットスポット評価のために取り組むべき課題が明らかになりました。現在、所内の先端半導体研究センターや化学プロセス研究部門と連携し、プロセスシミュレーション等を活用した薬液、ガスのCO2排出原単位計算を進めています。インベントリデータの整備によって半導体のLCAの方法を確立するとともに、グリーンサステナブル半導体の製造に向けたプロセス改善の提案を目指します。

    2025年01月31日