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  • ニトロメタンによる発破技術の確立に向けた基礎的研究
  • ニトロメタンによる発破技術の確立に向けた基礎的研究

    高橋良尭(爆発利用・産業保安研究グループ)

    • 佐分利禎(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 久保田士郎(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】
     近年、わが国の構造物の老朽化が深刻な問題となっており、その解体・改修工事が課題です。一方、わが国では耐震構造物が多く、解体には多大な労力を要します。通常、重機による解体が行われますが、都市部においては構造物の過密化が進み、重機が立ち入れない場面も増えています。そこで高エネルギー物質を利用した、発破による解体技術が注目されています。一般に発破では火薬類の爆轟現象を利用して対象物を破壊しますが、火薬類の都市部での使用については法令で厳しく制限されています。そこで火薬類には分類されない高エネルギー物質であるニトロメタン(以下NM)に着目し、爆轟よりも反応の穏やかなNMの爆燃反応を利用した発破技術について研究を進めています。

     

    【成果】
     爆燃は不安定な反応であり、条件次第では爆轟に転じることで、飛散物の発生等、想定外の事故を引き起こす恐れがあります。そのため、発破という破壊により周辺環境が時事刻々と変化するなかで、NMがどのような反応を呈するのかを把握することは極めて重要です。本研究では基礎研究として、図に示すように、異なる3種の(SUS、アクリル、モルタル)管内でNMを起爆し、発生する圧力を測定しました。実験の結果、SUS管内でNMを起爆した場合、急峻な圧力上昇と高いピーク圧力を示し、爆轟の発生可能性が示唆されます。一方で、アクリルやモルタルの場合は、SUSの場合よりもゆっくりとした圧力上昇かつ、持続時間の長い圧力発生が確認できました。これは爆燃現象によるものだと推察されます。同じ爆燃現象でも、モルタルとアクリルでは圧力が異なっていますが、アクリルとモルタルの機械的強度の差により、反応過程におけるNM周辺の破壊状況に差が生じるためだと考えられます。

     

    図 実験系と得られた圧力履歴

     

    【成果の意義・今後の展開】
     同じ起爆条件であっても、周辺環境の僅かな差によってNMは反応形態、それにともない発生する圧力上昇過程やピーク値が大きく異なることが明らかとなりました。都市部で想定されるのはモルタルやコンクリートの発破解体ですが、その強度や劣化の程度差などにより、NMは爆轟・爆燃のどちらも起こる可能性があることを示唆しています。今後はより実施工に近い条件での実験を実施し、安定して爆燃現象が発生する条件を見出し、安全な発破技術の確立に向け研究を進めていきます。

     

    ※ 本研究の一部はJSPS 科研費21K14298の助成を受けたものである。

    2025年01月31日