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  • セルロースナノファイバーの安全性評価書–2025–の公開
  • セルロースナノファイバーの安全性評価書–2025–の公開

    小倉 勇(暴露計測研究グループ)

    • 藤田克英(生態・健康影響評価研究グループ)
    • 森山 章弘(生態・健康影響評価研究グループ)
    • 眞野浩行(生態・健康影響評価研究グループ)
    • 田井梨絵(生態・健康影響評価研究グループ)
    • 堀江祐範(健康医工学研究部門 口腔フレイル研究グループ)

    【背景・経緯】
     セルロースナノファイバー(CNF)は、バイオマス由来の新しい素材として、幅広い分野への活用が期待されています。一方、新しい材料が社会で使われていくためには、これらの安全性を確認しておくことが重要です。
     当部門では、産総研内の他のユニットや福井大学、香川大学と連携して、NEDO事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」(2020~24年度)において、CNFの安全性評価に取り組んできました。その一環として、2025年1月に、CNFの安全性に関するNEDO事業の成果と国内外の論文情報をとりまとめた「CNFの安全性評価書-2025-」を公開しました。本評価書は下記の産総研ウェブサイトからダウンロードできます。
    https://riss.aist.go.jp/results-and-dissemin/1625/   

     

    【成果】
     本評価書は、2022年12月に公開した前回の評価書を更新したものであり、NEDO事業により得られた最新の研究成果を反映しました。新たな内容として、繊維状物質であるCNFがアスベストのように中皮腫を引き起こす可能性を評価した結果をまとめました(産総研健康医工学研究部門との連携による成果)。評価対象とした3種類のCNFについては、中皮腫の発生は確認されず、関連マーカーの上昇も認められませんでした。
     また、藻類・甲殻類・魚類などの水生生物に対するCNFの生態影響評価について、試験法に関する課題を整理するとともに、CNFに適した試験法の検討結果と、確立した試験法に基づく生態毒性試験の結果をまとめました。総じて、CNFの水生生物への影響は、一般的な化学物質と比較しても低いレベルにあると考えられました。
     さらに、吸入影響、経口毒性、排出暴露に関する情報も拡充しました。これらの成果を盛り込むことで、CNFの安全性評価に関する知見が一層充実し、より包括的な内容となりました。

     

    図 安全性情報を充実させた新しい「セルロースナノファイバーの安全性評価書」

     

    【成果の意義・今後の展開】
     今後も、引き続きCNFの安全性に関する情報の発信を行うとともに、展示会への出展や技術相談、技術コンサルティングなどを通じて、CNF関連事業者や新たに応用開発を目指す事業者を支援します。また、NEDO事業の成果を国際学術誌に発表することで、国外への情報発信・成果普及も推進します。これらの取り組みにより、安全性評価の観点からCNFの社会実装および市場拡大の早期実現を後押しします。

    2025年07月15日