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  • 再生プラスチック製品中に含まれる可能性のある化学物質含有量分布の整理
  • 再生プラスチック製品中に含まれる可能性のある化学物質含有量分布の整理

    小島 直也(社会とLCA研究グループ)

    【背景・経緯】
     循環経済(※1)の観点から、再生プラスチックに注目が集まっています。その利用拡大や価値向上のために、新品のプラスチック原料から再生プラスチック原料への代替が検討されています。一方で、再生プラスチック製品中には製造者の意図しない添加物や未知物質(以下、非意図的物質)が含まれる場合があり、これらがどのような健康リスクをもたらすか十分に評価できていないことが課題とされています。
    本研究では、ポリプロピレン製の再生プラスチックペレット(以下、再生PP)に含まれる物質含有量のバラつきを考慮したリスク評価のために、ペレットサンプル分析結果を網羅的に収集・整理しました。

    ※1:あらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を目指す社会経済システム

     

    【成果】
     文献データベースから「再生PP」および「分析手法」を組み合わせた検索を行い、1,000報超の学術文献・行政文書を収集し、その中から再生PP中の化学物質の同定・定量結果を含む12報を抽出して、個別サンプルごとの化学物質含有量をデータベースとして整理しました。その結果、PPの原料となる廃棄物の種類や分析手順、製造プロセスによる違いはあるものの、再生PPに約1,000種類の化学物質が含有される可能性があり、そのうち約100物質についてはその含有量の分布情報が取得できました。
     下図では、再生PPサンプル1kgあたりの「フタル酸ジブチル」(DBP)と「フタル酸ビス(2‐エチルヘキシル)」(DEHP)の含有量分布を例示しており、1mg以下から100mg超まで分布していることがわかります。含有量が最大となったサンプルは、DBPでは家庭ごみ由来、DEHPでは海ごみ由来であり、物質含有量の増大の一因であることを示唆しています。一方で、同じ由来であっても含有量の低いサンプルもみられ、サンプル製造プロセス、検出法などの要因も含めた分析・考察にも活用できます。

     

    図 PP製の再生プラスチックペレット中のDBPおよびDEHPの含有量の分布
    (<LODは検出下限値未満の意味)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     データベース化した情報を利用することで、サンプルの特徴と含有量との関係を分析できるだけでなく、安全側のリスク評価のために最大の含有量を用いたリスク評価結果と平均的な含有量を用いたリスク評価結果の両方を得ることができるようになります。
     今後は、これらの成果を利用し、再生PP中の化学物質含有量の管理方策の検討や、それらの物質がもたらす健康リスクの分布推定への活用が見込まれます。

    2025年12月09日