業務用冷蔵ショーケースに冷媒としてプロパンを用いた場合の漏洩爆発事故危害度の計測

【背景・経緯】
　現在、家庭用や業務用の冷蔵冷凍機器に使われている冷媒ガスは、オゾン層を破壊しない代替フロンですが、大気に放出された場合の地球温暖化効果が大きいことが知られています。この代替フロン類の地球温暖化効果は冷媒分子の大気寿命が短いほど小さくなるため、大気中での反応性がより高く大気寿命が短い分子を冷媒に用いることが検討されています。地球温暖化効果が小さい冷媒として検討されている分子の一つが、燃料としても使われる可燃性ガスのプロパンです。プロパンと似たガスであるブタンガスはすでに家庭用冷蔵庫等の冷媒として実用化されていますが、業務用冷蔵ショーケースの場合には使用量も多くなるため、室内で漏えい爆発事故が起きた場合の危害度を実規模実験で評価しました。

 

【成果】
　実験は、内寸4.9 m×4.9 m×高さ2.8 mの鋼製模擬室を製作し、模擬室内の一壁面中央に、幅120 cm、奥行き85 cm、高さ200 cmの観音開きスイングドアを持つ冷蔵機内蔵リーチインショーケースを設置して行いました。充填された冷媒が全量ショーケース内に漏洩した後、扉を開いて室内への漏洩が開始される事故シナリオを再現するため、ショーケース内に全量が漏洩した場合の濃度のプロパン-空気予混合気を調製した後、遠隔操作でスイングドアを開きました。プロパンの拡散挙動は、前年度の拡散挙動実験で計測済みであるため、扉が開いて高濃度のプロパン-空気予混合気が流れてくる扉下での電気スパークで予混合気に点火しました。図に漏洩したプロパンが爆発し、模擬室のガラス扉が破損して飛散する様子を示します。ガラス扉が破損したため室内の到達圧はそれほど高くなりませんでしたが、室内外での放射熱の最大値は160 kW m-2程度であり、持続時間が短いもののやけどを負うほどの危害度となりました。

 

図　模擬室内で漏洩爆発事故が起きた場合のガラス窓の破損挙動
プロパン充填量：500 g、冷却ファン：運転、点火位置：扉前50 cm、床上2 cm

 

【成果の意義・今後の展開】
　冷媒がショーケース内に漏洩した後に扉を開けることで一気に室内に漏洩する様な、プロパンが高濃度になりやすい条件で着火事故が起これば、冷却ファンの運転を続けていてもやけどやガラスの飛散による怪我の原因となりえることが示されました。安全に充填量の規制を緩め上限量を大きくするためには、漏洩したプロパンをより効率的に撹拌したりする等のさらなる安全対策が必要かもしれません。

※ この成果は、NEDO（国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構）の委託業務（JPNP18005）の結果得られたものです。

2025年12月09日