採掘国を区別した資源採掘に伴う外部費用の評価とLCAにおける影響評価への適用
横井崚佑(持続可能システム評価研究グループ)
【背景・経緯】
人口増加や経済成長、脱炭素技術の普及に伴い、世界的な資源需要の増加が見込まれて、将来の資源量の逼迫や利用可能性の低下が懸念されています。製品やサービスの様々な環境影響を包括的に評価するライフサイクルアセスメント (LCA) においても、資源採掘による影響は重要な問題として扱われており、評価指標開発が進められてきました。資源採掘の影響を他の環境問題と比較する上では、金銭単位といった共通の単位で評価することが有効ですが、資源利用可能性の観点から資源採掘の外部性を金銭単位で評価した指標の開発は不十分でした。さらに、資源利用可能性 (埋蔵量等) は採掘地点によっても異なりますが、既存の評価指標は全球規模での評価となっており、採掘国の違いを考慮に入れた指標はありませんでした。
【成果】
本研究では、採掘国の違いを考慮に入れた資源採掘による影響評価のための指標として、資源経済学の知見であるユーザーコストモデルを援用して、資源採掘による将来の利用可能性への影響を外部費用として金銭単位で評価するための指標を開発しました。指標は各資源の市場価格と採掘国ごとの枯渇年数に基づいて算定され、市場価格が高い資源 (金、白金等) の採掘による影響が大きく評価される一方で、枯渇年数が長い資源 (リチウム等) は市場価格に対して相対的に影響が小さく評価されます (図左)。本評価指標と各資源の年間採掘量を合わせることにより、2020年における対象32資源の世界での採掘に伴う外部費用は約1.9兆USドルと算定され、これは世界のGDPの約2.2%に相当しました (図右)。なお、本評価指標は日本で開発され使用されているLCAの環境影響評価手法LIME3 (https://www.maruzen-publishing.co.jp/book/b10122566.html) において資源消費の評価指標として採用されており、実際のLCAによる評価事例において適用されています。
本研究成果は下記論文で公開されています。
Yokoi et al. (2024) Country-Specific External Costs of Abiotic Resource Use Based on User Cost Model in Life Cycle Impact Assessment. Environ. Sci. Technol. 58, 7849–7859.
https://doi.org/10.1021/acs.est.4c00100

図 単位重量当たりの資源採掘に伴う外部費用 (左) および世界における年間資源採掘に伴う外部費用 (右)
【成果の意義・今後の展開】
本評価指標は様々な資源の採掘による影響を金銭単位で評価するもので、異なる資源の採掘の影響を統合して評価することが可能です。さらに、リサイクルの促進により資源採掘量を低減した場合の便益の評価への応用も可能であり、今後のサーキュラーエコノミー推進に向けた議論や資源代替・リサイクル戦略への貢献も期待されます。今後の展開としては、将来シナリオを考慮に入れた指標開発などを考えています。
※ 本研究の一部は、JSPS科研費 21H04944および23K28302の助成を受けたものです。
2025年12月09日

