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  • 鉱物資源供給における資源国リスクの多角的評価
  • 鉱物資源供給における資源国リスクの多角的評価

    畑山博樹(持続可能システム評価研究グループ)

    【背景・経緯】
     日本をはじめとした先進国は鉱物資源供給の大部分を輸入に依存しており、その安定供給のためには資源国がどのようなリスクを抱えているかを理解する必要があります。先進国の政府機関がクリティカルマテリアル(資源戦略的に重要な材料)の特定のために実施する供給リスク評価のモデルでは、政情不安のレベルが資源国のリスク指標として考慮されています。その一方で、同じく地域依存性が大きい自然災害リスクは評価モデルに反映できておらず、リスクを見落としている恐れがあります。これまでの研究では、自然災害による供給障害の事例を網羅的に収集・分析し、資源国ごとにその発生頻度を算定していました。このデータを用いて、資源国における自然災害と政情不安のリスク傾向の違いを分析しました。
     

    【成果】
     過去に発生した自然災害起因の供給障害について、ニュース記事等から約18,000件のイベントデータを作成しました。ここから資源国ごとの障害発生頻度を算定し、GDPでスケーリングした上で正規化した指標によって、93の資源国を対象に自然災害リスクを推定しました。リスクはパプアニューギニアを筆頭に、キルギス、モザンビーク、フィリピンなどが高くなっています。また、自然災害と政情不安という異なるリスク側面を比べると(図)、カナダやオーストラリアは従来の政情不安の観点では低リスクな一方で、自然災害はやや高リスクな結果となりました。全体としては、2つの異なるリスクの間に強い相関はないことがわかります。1つの側面のみで供給リスクを評価するのではなく、多角的な側面を取り入れることの重要性を改めて認識させる結果が示されました。

     本成果を発表した下記論文では、自然災害だけでなくストライキや事故のリスクについての分析結果も示しています。

    Hatayama et al. (2025), Resources Policy, 109, 105718.
    https://doi.org/10.1016/j.resourpol.2025.105718

     

    図 資源国の自然災害リスクと政情不安リスクの比較

     

    【成果の意義・今後の展開】
     資源国が抱える自然災害リスクを新たに推定した本成果は、鉱物資源供給リスク評価に基づく合理的なリスク管理の促進に寄与すると考えられます。また、リスクの指標化に取り組む中で、過去の事象に基づいた経験的なリスク評価手法を提案することができました。このようなアプローチはエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングに沿うものであり、今後日本のクリティカルマテリアルの特定や資源戦略の検討に役立てていきたいと考えています。

    2026年02月04日