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  • 試験困難物質の生態リスク評価
  • 試験困難物質の生態リスク評価

    加茂 将史(生態・健康影響評価研究グループ)

    • 眞野 浩行(生態・健康影響評価研究グループ)

    【背景・経緯】
     生態リスク評価は化学物質の有害性の強さと環境中濃度の組み合わせで決まります。化学物質の中には有害性の把握が困難で、評価が遅れている物質があります。カチオン系界面活性剤もその一つで、溶存有機物(DOC)濃度に応じて有害性が変わるため環境中の界面活性剤の濃度把握に加えてDOC濃度の把握も必要で手間がかかるということに加えて、この物質はビーカー、ピペットや分析機器等々に吸着してしまい、設定濃度、試験開始時、終了時と時間を経るほど濃度が下がっていく(ように見える)ため、どれが曝露濃度として正しいのかわからないという問題により有害性の把握が困難になっています。本研究では、モデルを用いてどの濃度を評価に用いるのが良いだろう、というのを考えることにしました。
     

    【成果】
     試験開始前、試験終了時、試験中間時等、濃度分析濃度は様々です。それらの中から、生物が実際に曝露されているのはどの濃度かを決めたいのです。生物の半数に影響が現れる濃度、EC50、を予測することにします。問題はどの濃度をモデルの変数として用いるかです。ここで「分析濃度はタイミングにより様々だが、実際に曝露されている濃度(に近い濃度)をモデルの変数として用いれば、予測誤差はより小さくなるだろう」との仮定をおきます。そして、それぞれの濃度でモデルを作成し、当てはまりの良さを調べてみました。結果を表に示します。DOC濃度により有害性が異なるため、二つのDOC濃度で試験を行いました。いずれにおいても、試験開始時の濃度でモデルを作ると、最も予測力が高くなることがわかりました。設定濃度は、フラスコへの分注の過程等で濃度の変化が大きい(不確実性が高い)、終了時濃度は試験期間中にビーカーや分析器への吸着で失われるものが多すぎて予測力が落ちるのではないかと推測されますが、現時点では単なる推測です。
     

    表 藻類におけるカチオン系界面活性剤の有害性(増殖阻害率)の観測値とモデル予想値の二乗差(値が小さいほどモデルの予測力が高いことを示す)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     公的なカチオン系界面活性剤のリスク評価は、来年以降に開始されると聞いています。この結果は、その際活用されると期待されます。注意点ですが、モデル屋はどうすれば高い予測力を得られるかとの観点からモデルを作ります。しかし、例えこの濃度を使えば予測力は高いことが分かったとして、生物が実際にその濃度で曝露されているかはまた別問題です。実際の曝露濃度をどう明らかにするか、それも調べていますが、結果は来年!
     
     

    ※ 本研究は、日本化学工業協会LRIプロジェクトの一環でなされています。藻類の有害性試験はいであ株式会社で行われました。

    2026年02月04日